寄与分がある場合の遺産分割
1 そもそも寄与分とは何か
例えば、亡くなったお父さんの財産の増加に、多大な貢献をした相続人がいる場合、法定相続分どおりの割合で遺産を分けることが、むしろ不公平になるケースがあります。
具体例を挙げると、お父さんが事業を行っていて、その事業が上手くいっていないときに長男が1000万円の援助をしたような場合、長男の援助によってお父さんの財産が増えたという見方ができます。
そのような場合に長男の遺産の取り分を多くするための制度が、寄与分という制度です。
つまり、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人は、法定相続分の他に寄与分が認められるのです。
2 寄与分は大きく分けて5つの種類がある
⑴ 家業従事型
長男が、無報酬でお父さんの事業をずっと手伝っていたような場合です。
お父さんは従業員を雇うことなく事業を続けることができ、結果的にお父さんの財産が増加した場合は、寄与分として認められる場合があります。
⑵ 金銭等出資型
長男が、お父さんに財産的な援助をした場合です。
先ほどのような事業資金の援助はもちろん、不動産の購入費用の援助、医療費や介護費用の援助なども含まれます。
⑶ 療養看護型
本来なら、お父さんの介護をプロに任せるべきところを、長男が頑張って自宅で介護を行ったような場合です。
このようなケースでは、本来であればプロに支払うべきであった報酬を支払わずに済んだため、お父さんの財産を節約できたと考えることができます。
⑷ 扶養型
長男が、無報酬でお父さんの生活費全般の面倒を見ていたようなケースです。
例えば毎月仕送りをしていたり、同居して衣食住の面倒を見ていたりした場合が、この類型に含まれます。
⑸ 財産管理型
長男が、無報酬でお父さんの財産管理をしていたようなケースです。
例えば、お父さんが所有する不動産の賃貸管理や、立ち退き交渉などを代行していた場合が、この類型に含まれます。
3 寄与分がある場合の遺産分割は揉めやすい
寄与分の主張をする人がいるということは、「自分は特別なことをした分、遺産を多く取得すべき」と主張している人がいることになります。
もちろん、それが本当に法的な寄与分の要件を満たしているのであれば正当な主張であるため、遠慮なく主張すべきかと思います。
ただ寄与分は、長年の積み重ねによるものが多く、貢献したことを数字で表すことが難しいため、証拠が残っていないなどの問題があり、なかなか認められない傾向にあります。
また、あまり仲が良くない相続人同士だと、寄与分の主張は反感を生みやすくなるため、相続人の合意を得ることが難しくなり、それによって遺産分割が長引いてしまうケースもあります。
寄与分について、相続人同士の話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所の調停または審判の手続きを利用することになります。
参考リンク:裁判所・寄与分を定める処分調停
なお、遺産分割における寄与分の主張には、相続開始から10年以内という期限があり、期限を過ぎてしまうと、原則として寄与分を主張することができなくなってしまう点にも注意が必要です。
以上から、寄与分がある場合の遺産分割は、早めに専門家に相談することをおすすめします。