遺産分割協議をしないとどうなるのか
1 遺産分割協議について
遺産分割協議は、相続人の間で、誰がどの財産をどれだけ取得するかについて話し合って決めることで、それを書面にまとめたものが遺産分割協議書です。
遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
2 遺産分割協議をしないことのデメリット
遺産分割協議をしないままでいると、次のようなデメリットがあります。
⑴ 次の相続が発生する
遺産分割協議がまとまらないうちに次の相続が発生すると、相続人が増えて多数になり、連絡や話し合いが困難となり、ますます協議がまとまらなくなってしまいます。
⑵ 相続人が認知症などになり手続きができなくなる
相続人が認知症などになって判断能力が低下すると、その相続人は遺産分割協議に参加できなくなるため、成年後見人を選任する必要があります。
その場合、裁判所での手続きが必要となり、成年後見人の報酬も発生するので、負担が大きくなります。
⑶ 不動産の売却や預貯金の解約ができない
遺産分割協議がまとまらないと、不動産の売却や預貯金の解約ができず、相続手続きが進まなくなってしまいます。
⑷ 相続税の申告・納付期限に間に合わなくなる
相続税の申告は、原則として相続開始の翌日から10か月以内に行いますが、遺産分割協議を行って、それぞれが相続した分に応じて申告・納税する必要があります。
ところが、遺産分割協議が終わらないと、正確な取得分が決まりません。
その場合は、さしあたり、法律に定められた相続分に応じて申告・納税をしたうえで、遺産分割協議後に正確な取得分が決まってから、あらためて修正申告や更正の請求を行うこととなり、手間が増えます。
⑸ 相続登記の期限に間に合わなくなる
令和6年4月1日から相続登記が義務化されていますので、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければなりません。
しかし、遺産分割協議をしないままで、誰がその不動産を取得するのが決まらないと、相続登記の手続きを進めることができなくなります。
⑹ 相続財産に関する責任を相続人全員が負うことになる
遺産分割協議をしないままでいると、相続財産に関する責任は相続人全員が負うことになります。
たとえば、不動産が倒壊し、第三者に被害が発生した場合には、相続人全員が責任を負うことになりますし、固定資産税などは相続人全員に支払義務があります。
誰も住んでいない空き家などを、不要であるからといって放置してしまうと、様々なリスクが生じるため、注意が必要です。
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