遺産分割に期限はありますか?
1 遺産分割の期限
遺産分割については、法律上の期限がありません。
そのため、理論的には、いつ遺産分割を行ってもいいということになっています。
しかし、例えば相続放棄や相続税申告、相続登記など、相続に関する手続きには、法律で期限が定められているものがあります。
また、寄与分や特別受益については、期限を過ぎると遺産分割で主張ができなくなることもあります。
そのため、遺産分割に期限がないからといって、遺産分割をしないまま放置すると、大きなリスクが発生する可能性があります。
以下では、遺産分割を放置することのリスクについてお答えします。
2 遺産分割を放置するリスク
⑴ 予想外の債務を負う可能性
遺産分割に期限がないからといって、どんな遺産があるのかについても、あまり調査することなく、放置しているということが多くあります。
もし、亡くなった方に債務があった場合には、相続放棄をしておかなければ、その債務を背負うことになってしまいます。
債務には、消費者金融で借りる債務、家や車のローン、交通事故の加害者としての賠償金なども含まれます。
これらの債務は、時には何千万円という大きな金額になることがあります。
そのため、少なくとも債務の有無については、相続発生後すぐに調査する必要があります。
⑵ 相続税申告で余計に税金を支払うリスク
相続税申告の期限は、亡くなってから10か月しかありません。
この期間の間に、申告書の作成と、税金の納付まで済ませる必要があります。
その際、税金を安くするための特例を使おうと思っても、遺産分割が終わっていなければ、その特例を使うことができません。
そのため、いったん税金を余計に納めて、遺産分割が終わってから、税金を取り戻すといった手続きが必要になってしまいます。
参考リンク:国税庁・相続財産が分割されていないときの申告
遺産分割には期限がありませんが、税金面において、相続税申告の期限までに遺産分割を完了しておくことが望ましいといえます。
⑶ 相続登記を行うことができない
令和6年4月1日から相続登記が義務化されますので、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由なく相続登記の申請を行わないと、過料の対象となります。
なお、令和6年4月1日以前の相続においても、令和6年4月1日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
参考リンク:京都市情報館・相続登記の申請義務化について
遺産分割がまとまらない等の理由で期限内に相続登記ができない場合には、いったん法定相続割合で登記をするか、法務局に相続人であることを申し出て、登記申請義務を免れる制度を利用することもできます。
⑷ 相続人が何十人にもなるリスク
遺産分割を行わない場合には、相続人同士で遺産を共有している状態になります。
たとえば、Aさんが亡くなり、4名の子がその相続人となったとします。
その4名が、遺産分割を行わないまま亡くなった場合、その4名の子である、孫の世代で、遺産分割を行う必要があります。
さらに、孫の世代が遺産分割を行わなかった場合には、ひ孫の世代で遺産分割を行わなければならないことになります。
その結果、相続人が何十人にもなってしまうことも珍しくありません。
こうなってしまうと、相続人を調べるだけでも何か月もの期間を要しますし、相続人が集まって話し合いの席を設けることも非常に困難になります。
このような事態を回避するためにも、相続が発生したら、迅速に遺産分割協議を行うことをおすすめします。
3 遺産分割はお早めにご対応ください
遺産分割に法律上の期限はないとはいえ、放置することはリスクが大きすぎるため、可能な限り早く遺産分割を行うことが大切です。
相続人の方だけで遺産分割協議を進めることに不安がありましたら、私たちにご相談ください。
私たちにご相談いただけますと、遺産分割を得意とする者が状況を伺った上で、今後どのように対応すればいいのか、どのような流れで手続きが進むのかについて、しっかりとアドバイスさせていただきます。
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